次はスリッパ、なんだそうです。
ストローの使い捨てはやめようということで、プラスチックのストローはどんどん紙に変わりました。ストローの次に環境保護運動家が標的にしているのは、スリッパだという意味です。ホテルの部屋に置いてある使い捨てスリッパ、この対策はストローほどかんたんではありません(Are Disposable Hotel Slippers the Next Plastic Straws? April 30, 2024. The New York Times)。
むかし、西洋のホテルにはスリッパなんかありませんでした。でもいま高級ホテルはロンドンだろうが上海だろうが、どこでも客室の使い捨てスリッパは標準装備です。
屋内ではスリッパに履き替えるというアジアの習慣は、この半世紀で世界中に広がりました。部屋が汚れないし、くつろげる。日本の安宿では使い回しだけれど、高級ホテルでは使い捨てが当たり前です。清潔な使い捨てスリッパがないと、ホテルは格付けを落とされてしまう。
ホテル業界の持続可能性といえば、これまでは光熱費や水、食品のムダ使いがテーマでした。それにくらべればスリッパは小さな問題です。でもスリッパの原料はプラスチックと合成繊維で、使い捨ては地球環境への罪です。アメリカの高級ホテルが廃棄するスリッパは毎月1千万足にもなるというから、どうにかしなければならない。
ひとつは、プラスチックをやめることです。
シックスセンスという高級リゾートホテルでは、麻と竹でできたスリッパを提供するようになりました。マンダリン・ホテル・グループは2022年、使い捨てスリッパを全廃し、紙とコルク、木綿の製品に替えています。それも洗って使い回し。再生プラスチックを使ったり、客の要請があるときだけスリッパを提供するホテルもあります。
もうひとつは、使い捨てをやめることです。
他人が使ったスリッパの使い回しには抵抗がある。だったら捨てるのではなく持ち帰ってもらおうと、デザインのいいスリッパを用意するホテルも現れました。しゃれたスリッパで高級ホテルのロゴが入っていれば、客はけっこう持ち帰ってくれる。たしかにこれは使い捨てより、多少はいいかもしれません。
いちばんいいのは、自分のスリッパを持ち歩くことでしょう。むかし、ぼくらが海外に出るときはそうしていたのだから、これは旅のマナーとして復活するのではないか。
ホテルのスリッパ。トリビアな話題です。でも宿泊客が、あ、このホテル進んでるなと感じればホテルの評判も上がる。ホテル業界の持続可能性は、ファッションやトレンドとともに進めなければなりません。
(2024年5月2日)