もう2か月も前に読んだ記事が、いまも頭に浮かびます。
中国について考えるたびに。中国たたきに走るトランプ政権を見るたびに。
記事には、とても印象的なキーワードがありました。
ダーク・ファクトリー(Dark Factory)。字義通りに訳すなら「暗い工場」、でもぼくの頭にひらめいたのは「黒工場」でした。
中国の最新鋭の工場は、人間がいなくてロボットだけだから照明がない。高品質のハイテク製品を、ロボットが暗闇で24時間作りつづけている。この工業力にアメリカはもうかなわない。そう思わせる記事をニューヨーク・タイムスのトーマス・フリードマンさんが書いていました(How Elon Musk and Taylor Swift Can Resolve U.S.-China Relations. By Thomas L. Friedman. Dec. 17, 2024. The New York Times)。

フリードマンさんは中国を訪れ、政府高官や経済、産業界の要人と会談しています。そのうえで、世界の頂点に立つ輸出大国とケンカするのは時代錯誤だと警鐘しています。
「われわれが寝ているあいだに、中国の工業力は飛躍的に進歩した・・・トランプは中国の恐るべき輸出力と対峙しなければならない。過去8年で中国は大規模で高度な先進工業レベルに達し、絵に描くならポパイのように力強い存在になった」
25年前、全世界の工業製品に中国の占める割合は6%にすぎなかった。けれど国連推計によれば、2030年には45%に達するとみられる。中国一国で、アメリカと同盟国の全部をあわせた工業力に対抗できるようになるといいます。
いま中国では、こんな冗談が聞かれる。
「トランプが、中国は輸出をやめてアメリカに工場を作れって? いくらでも作るよ。40か、50か? でもそこで働くのはロボットだけだ。しかもそのロボットは中国から操作する」
それでもいいのかと、「黒工場」の人びとはいいます。

中国の先進工業力は、世界中の自動車をEV化しつつある。
だのにトランプ大統領は地球温暖化を否定し、石油を「掘れ、掘りまくれ」と叫んでいる。EV優遇税制も廃止した。中国にいるアメリカ外交官が、フリードマンさんにささやいたそうです。このままじゃアメリカはキューバになる。
大むかしのガソリン車しかないアメリカ。
それ以外のすべての国では、いずれ中国のEV車がドライバーなしの自動運転で走りまわる。
もちろん中国は中国で、全体主義の息苦しさは強まるばかりだし、失業や住宅問題、人口減少など深刻な課題をかかえている。けれどいまの中国に脅しは通用しない。懸命に対処しなければアメリカは破滅するとフリードマンさんはいっています。
(2025年2月24日)