食の精神性

 食の心をとりもどそうという、初の国際大会がブータンで開かれています。
 食べることの大事さ、精神性をブータンと結びつけた知恵者がいたのですね(Bhutan hosts first ‘conscious food summit’ amid threats to global supplies. 31 Aug 2026. The Guardian)。

 食物は、ただ作って売る、買って食べるだけのものではない。われわれはもっと、食べることの「心」を考えなければならない。
 こう訴えて開かれたのは「コンシャス・フード・サミット」、食の精神性を訴えるサミットといってもいいでしょう。
 ジャンクフードやファストフードではなく、工業的に生産流通する資本主義の食品でもなく、人間を養う根源としての食べものをもっと内面から意識しようというこころみです。世界60か国の代表が、ヒマラヤの山奥にあるブータンの町パロにやって来ました。

ブータン(資料映像)

 サミットの開催地、ブータンのトブガイ首相は、気候変動や世界的な紛争の多発で食の安全保障がますますおびやかされているといい、「食のシステムを、外面と内面の両方から変えなければならない」と参加者に呼びかけました。
 外面とは、農業や政治のあり方、内面とは、食べることや食べものを大企業や政府に押しつけられるままではなく、自分の価値観を反映させることです。
「心あるやり方は、土壌を侵食するのではなく再生可能なものとし、われわれの食料をつくる人びとの暮らしを守るものでなければならない」

 食べ物が商品となり、大量に捨てられたり不健康な食生活をもたらしたりしているが、こうした暮らしは変えなければならない。そのために、サミットには「精神の達人」である瞑想家やヨガ指導も招いた。彼らとともに私たちは自分の内面を変えよう。
 その最初のステップは、感謝の念ではないか。
 世界の多くの文化は、食べものや食べものを作りもたらすものに感謝の念をささげる儀礼がある。儀礼を再認識し、食べ物を大事にする心をはぐくもうとトブガイ首相はいっていました。

 いかにもブータンのサミット、ブータンの首相の言です。
 仏教国であるブータンは、GDP、国民総生産ではなくGNH、国民総幸福という指標を採用して有名になりました。どれだけ生産するかより、どれだけ幸福か。カネより幸せ。それがかならずしもうまくいっていないと揶揄するのはかんたんだけれど、人口70万の小国の生き方にはすがすがしさがあります。
 そういうブータンのサミットだから、食料をどうやって増産するかより、農業と土壌の再生可能性をかかげ、先住民の知恵に学ぼうと呼びかける。
 現実ばなれしているからこそ、夢があります。
(2026年9月2日)