メガネ業界の混乱

 メガネの「ブルーライト・カット効果」って意味ないでしょ、という調査結果が出てきました。
 ブルーライト・カットとは、パソコンやスマホの画面から出てくる青い光が目に悪いから、これをカットしましょう、ということです。最近メガネ屋さんに行くと「ブルーライト・カットにしますか」と聞かれるようになった。これは意味がないというのですね(Blue-light glasses may not reduce eyestrain from screens, study says. August 17, 2023. The Washington Post)。

 ぼくは最近メガネを新しく作り直したばかりで、そのとき店員から「ブルーライト・カット」を勧められています。でもそのためにレンズにコーティングをすると3千円もかかる。そんなのいらないと思ったのですが、断ってよかった。
 ブルーライトっていうから有害光線のような気がしてしまうけれど、ただの青い光、太陽光のなかにも含まれている。それがいつから有害になったのか。最近はパソコンのモニターから出るブルーライトもカットしましょうなんていわれるようになった。いつから誰がしくんだ陰謀だったのか。

 今回、メルボルン大学のローラ・ダウニー准教授らがコクラン・ライブラリーというサイトに発表しブルーライト・カット(フィルター)についての調査結果はこうです。
「私たちの評価は、目の疲労を防ぐ目的でブルーライト・カットのレンズを使っても、健康なおとなの場合、その目的を達成できないというものでした」
 この評価は、ブルーライトに関連してこれまで各国で発表された17の研究論文を、総合的に比較検討した結果です。カリフォルニア大学で眼科学を教えるケビン・ミラー教授は、「予期された知見だった」といいます。
「メガネ屋さんに行って‘ブルーカット、どうですか’っていわれたら、‘やめとくよ’っていいなさい。私はそう答えるね」

 ブルーライトが有害といわれるようになったのは、だいぶ以前の動物実験からのようです。その後、通常の環境下にいる人間については確認できなかった。でも有害「かもしれない」ことをメガネ業界は最大限に活用し、消費者の不安、というか懸念をあおり、法外な利益をあげてきたのではないか。そんなふうに思えてなりません。

 今回の発表で、ブルーライト商法は消えてゆくでしょう。でも似たような商法って、ほかにもいっぱいあるんじゃないか。サプリだとかエナジー・ドリンクだとかマイナスイオンだとか。巧みな“イメージ・キャンペーン”で成功している商法、商品に、どうしてぼくらは乗せられてしまうのか。これは「科学的知識」の問題じゃないような気がする。
 最後は、常識なんじゃないでしょうか。
(2023年8月22日)