PFAS

 PFAS、ピーファス。
 ときどきメディアで見るようになったことばです。有機フッ素化合物、永遠の化学物質ともいわれる。ぼくにとっていちばん身近な例は、テフロン加工のフライパンでしょう。焦げつきがないすばらしい調理器具だと思っていた。ところが、これがどうもかなりヤバイらしい。
 環境ホルモンみたいなものかと見過ごしていたけれど、ずっと本質的で深刻な問題ではないか。考え方を変えなきゃいけないと思いました(‘Forever Chemicals’ Are Everywhere. What Are They Doing to Us? By Kim Tingley. Aug. 16, 2023. The New York Times)。

 これまでは断片的な報道しか目にしませんでした。でも今回、ニューヨーク・タイムズ・マガジンの長文の特集で(読むのに2日かかった)ようやく全体像が見えた思いです。
 気がついたことをいくつかメモしましょう。
・PFASは、炭素とフッ素が結合した「有機フッ素化合物」の総称。1万2千種類あるといわれ、いまもその数は増えている。
・「テフロン加工」だけでなく、ハンバーガーの包み紙、ピザの容器、シャンプー、デンタルフロス、ヨガパンツ、スニーカー、家具など、あらゆるところで使われている。もちろん軍事にも、医療にも。
・はじめは、人間の身体には反応せず、安定、安全だと思われていた。
・ところが、がんや糖尿病などの慢性疾患を引き起こし、胎児の発育にも影響するのではないかと示唆する研究結果があいついで公表されるようになった。

 2012年の研究によれば、PFASの1種である「PFOA」は、高コレステロール血症、潰瘍性大腸炎、精巣がん、腎臓がん、妊娠高血圧症、甲状腺疾患という6つの疾患と「関連する可能性がある」とされています。
 また2022年の研究は、PFASが非アルコール性の肝臓肥大に似た障害を起こす「持続的な証拠」があるとしています。どうもPFASは、肝臓への影響が目立つらしい。
 神経系への影響も考えたほうがいいと、ウェストバージニア大学のアラン・ダカトマン教授はいいます。
「PFASはADHDの原因なのか、自閉症を増加させるのか。そうしたことを心配すべきだというエビデンスが、すでに十分にそろっている」
 そのほか、多くの健康被害についての調査研究がここ数年出てくるようになりました。

 アメリカでは水道水に含まれる6種類のPFASについて、環境保護省が規制に乗り出しています。さらに先をゆくヨーロッパでは、PFASをすべて禁止すべきだという議論がはじまりました。いつものように欧米先行ですが、それを見ながら、ぼくらは日本政府にも行動を求めなければいけません。
(2023年8月18日)