気候危機に対してぼくらは何ができるだろう。
石油から電気へ、電気は風力や太陽光を重視する、電球はLEDに替え、できるだけ牛肉は食べないようにする、あとは何だろう。そんなことを考えていたら、そんなことをいっているあなた自身、じつは石油業界にだまされているんですという声がありました。たしかにそうかもしれないとちょっとショックでした(Quiz: What’s the Best Way to Shrink Your Carbon Footprint? By Sander van der Linden. December 15, 2022, The New York Times)。
声を上げたのはケンブリッジ大学の社会心理学者、サンデル・ヴァン・デル・リンデン教授です。教授は、気候危機についてのぼくらの心理を分析するクイズを出していました。
炭素排出を少なくするために、どんな手段が有効かのクイズです。「買い物を少なくする」とか、「エアコンの温度を下げる」「飛行機に乗らない」といったさまざまな手段が並んでいます。当然ながら「リサイクリング」に多くの人が高い評価を与えていました。
ここに、落とし穴があるんですと教授は指摘します。
多くの人はリサイクリングを進めれば炭素が減るように思っているけれど、リサイクリングはそれ自体で炭素を減らすわけではない。これ、分けて考えたほうがいいテーマですよね。教授がそういうので、ぼくはいわれてみりゃそうかもと思いました。
驚いたのはそのあとです。
なぜ多くの人がリサイクリングと地球温暖化を混同するようになったか。
それは何十年にもわたるプラスチック業界のキャンペーンがあったからだというのです。1980年以来、石油化学産業は巨額の宣伝費を使って「プラスチックのリサイクル」を勧めてきた。でも実際にはプラスチックはほとんどリサイクルされることなく、ゴミ処理場に埋められるだけだった。プラスチックの生産も流通も減っていない。みんな、リサイクルしてるからいいと思わされてきたということですね。
この4月、カリフォルニア州の検察当局は、石油化学業界が「大衆をだます」ために「積極的な運動」をしてきたのではないかと、捜査に乗り出すことにしたそうです。
アメリカは長年プラスチックごみを埋め立ててきました。西海岸のプラスチックは中国に送ったりもしていた。しかし2018年に中国が受け入れをやめ、いまではかなりの部分を国内で埋めています。それをリサイクリングといって問題が解決したかのように思わせてきたのは、石油化学産業がもたらした「幻想的真実」だったと、リンデン教授はいいます。ぼく自身、そういう幻想的真実を信じてきたことは反省しなきゃいけません。
日本の事情はアメリカより少しはいいようですが、本質はおなじでしょう。
リサイクルではなくリユースへ、リダクション(減少)へ。これがプラスチック対策のあるべき姿です。石油業界のキャンペーンに乗らないようにしなければ。
(2022年12月27日)