床下のクマ

 家の床下にクマが住んでいる。
 そういう家がアメリカのコネチカット州にあります。住人のヴィニー・ダシュケウィッチさんがそのクマを撮影してSNSにアップし、1千5百万回も再生されました(A Family Found a Hibernating Bear Under a Deck. They’re Letting It Stay. Jan. 9, 2023, The New York Times)。

 床下にクマが住んでいるなんて、日本だったらありえない。でもコネチカットではよくあることだそうです。ブラックベアーという比較的おとなしいクマなので、住民も付近の人もとくに心配はしていない。
 以下がそのクマの動画です。床下にいるのを上から撮影したらしく、上下逆さまの映像になっているようです。

 住人のダシュケウィッチさんは、年末の12月30日にこのクマを発見しました。飼っている犬を裏庭に放したところ奇妙な動きをするので、よく見たらウッドデッキの床下の奥まったところに、太った大きなクマがうずくまっていたという話です。
「まったく無関心で、完全に居心地いい、っていう感じで」
 冬眠中のクマでした。山のなかに穴を掘るべきところを、人間の家の床下に転がりこんだらしい。冬眠とはいっても完全に寝ているわけではなく、目は開いているしモソモソ動いたりもする。半分寝ているような感じらしい。

ブラックベアー(資料映像)

 これが日本だったら大騒ぎです。警察や猟友会が出て、危険だ、処分しろ、となりかねない。でもコネチカットではブラックベアーが出没するのは日常のこと。野生生物局の専門家によれば、ブラックベアーはこの20年で急激に増え、民家の床下に入りこむといった例が年に10から20例もあるそうです。
 北米のクマとしては一番小型ですが、大きくなれば200キロを超える。人間を襲うことがないわけではないが、「ひじょうにめずらし」らしい。

 ダシュケウィッチさんは、クマがいても「ぜんぜん、迷惑じゃない」といっています。もちろん気をつけるし、近所の人に様子は知らせる。でも冬眠が終われば森に帰るから、それまでバードウオッチングならぬベアーウォッチングを楽しめばいい、というくらいに考えているようです。
 床下にクマがいるなんて、なんてうらやましい暮らしでしょうか。
(2023年1月16日)