糖尿病はだれのせいか

 糖尿病になった若者が、病気の原因はジャンク・フードだと食品企業を訴えました。
 それは無理な話、八つ当たりだと思ったけれど、よく聞くと印象が変わります。ジャンク・フード、超加工食品は、もっと社会問題化すべきかもしれないと(This Is the Way Out of Our Ultraprocessed Dystopia. July 27, 2026. The New York Times. By Julia Belluz. July 27, 2026. The New York Times)。

 訴訟を起こしたのは、ペンシルベニア州のブライス・マルティネスさんです。16歳のとき、心臓の痛みで救急搬送され、2型糖尿病および脂肪肝と診断されました。小さいころから肥満だったけれど、まさかそんな病気だとは知らなかった。
 ネットで調べ、いろいろわかったといいます。
 アメリカの子どもの食生活はおかしくなっている。いちばんよく食べるのはいちばん健康によくない食べ物だった。チーズマカロニやピザ、バーガー、アイスクリームなどはほとんどが過剰な塩、砂糖、脂肪や添加物を含んでいる。

 ジャンク・フードといわれ、超加工食品ともよばれる便利な食べ物は、食べずにはいられないようにできている。この依存性こそが問題の核心ではないか。子どもを依存させるような食品を作り、売ることで、食品企業は糖尿病や多くの慢性疾患を作りだしてきた。
 そう考えたマルティネスさんは2024年、18歳のときにハインツやコカコーラ、ネスレなど大手食品企業11社を相手取って訴訟を起こしました。

 訴訟は、連邦地方裁判所で却下されました。
 ほかにも何件かおなじような訴訟が起こされているけれど、勝てる見通しはありません。デューク大学のケリー・ブラウネル博士はいいます。
「有害な食品が議論され、製造企業が問題とされ、何らかの政策が必要と議論されてもう30年か40年になるが、何も起きてはいない」

 けれど、訴訟をずっと取材してきたジュリア・ベルーズさんは、訴訟こそが最後に残された手段ではないかと感じています。
 なぜならタバコの害を克服したときも、訴訟が突破口だったから。何百もの訴訟が起こされ、タバコ産業は強大な力を駆使して勝ちつづけたけれど、訴訟をとおして世論が動き、地域が動き、ついには政治も動いてタバコ規制は進みました。
 教訓は、依存を個人の「意思」の問題にしないということです。
 依存を作り出す「しくみ」こそが問題とされなければならない。マルティネスさんたちはそう考えて、超加工食品の企業を訴えました。
 訴訟は、起こすことによって世の中を変える力にもなります。
(2026年7月31日)