かねてから心配だったことがあります。
スーパーで買うエビは大丈夫だろうか。ほとんどが途上国からの輸入品らしいけれど、農薬や抗生物質が混入してはいないか。それにあの殻はどうやってむいているんだろう。なんか強い薬品でも使ってるんじゃないか。食べても健康に害はないだろうか。
調べてみたら、殻むきについては薬品で処理しているのではない。機械的に殻をそぎ取る専門のシステムができているから、問題はないらしいと見当がつきました。
問題は養殖環境です。ぼくらが食べるエビは過剰な養殖で周辺の漁業、自然環境にかなりの悪影響を与えているらしい。やっぱり「安くておいしいエビ」の陰では誰かが、何かが損なわれている(Can technology clean up the shrimp farming business? Feb. 24, 2023. BBC)。
BBCによれば、インド東部のバングラデシュに近い沿岸部では多くの農民が農業ではなくエビを養殖するようになりました。インドはいま、冷凍エビの年間輸出額が50億ドル、世界一の生産量です。養殖の池が広がり、大量のエサや抗生物質が使われ、汚染された排水が川や海に流れ込む。水質は悪化し、漁業は壊滅的な打撃を受けている。でも従来の農業や漁業よりエビの養殖の方がはるかに高収入なので、誰もそれを問題にしない。
そこにいま、「タンク養殖」という新しい方法が提唱されています。これはタンクのなかでエビを養殖する方法です。水を循環させ、その水はつねにフィルターで濾過する。水の使用量がはるかに少なく、場所も取らず安全に効率よくエビが養殖できる。日本ではじまっている内陸でのサケの養殖とおなじですね。だからインドのエビ養殖もタンク式に移行すればいいけれど、これは設備にカネがかかる。
実現へのひとつのカギは、こういう「正しいエビ」が消費者のもとに届く流通ルートができるかどうかでしょう。もしも消費者が、多少高くても環境を壊さないエビを買うようになれば、タンク方式は成立するかもしれない。
つまりフェアトレードとか、環境正義いう概念が養殖エビの世界にも入り込んでいる。
ぼくらが、途上国から輸入された「安くておいしいもの」を食べれば食べるほど、現地で働く人がブラックな労働に虐げられ、地球環境が破壊されるのであれば、そういう消費行動はできるだけ控えるべきなのです。
養殖エビについては、いまは選択肢がないからフェアトレードも環境正義も実現できません。でも、そういう「正しいエビ」がないもんだろうかと考えていれば、そのうち誰かがどこかで、流通ルートを作ってくれるんじゃないでしょうか。
(2023年3月3日)