頭にも運動が必要

 ネットやソーシャルメディアにどっぷり浸るのはもうやめよう。
 コンピュータ科学者が訴えています。さんざ聞いた議論だと思うけれど、ひとつ新鮮な視点がありました。それは、身体が運動を必要とするように、脳もまた「運動」が必要だということです。ネットにはまっているとぼくらの脳は「運動」していない。
 いわれてみれば、たしかにそうです(There’s a Good Reason You Can’t Concentrate. By Cal Newport. March 27, 2026. The New York Times)。

 脳にも運動をというのは、ジョージタウン大学でコンピュータ科学を教えるキャル・ニューポート教授です。
 教授は、1955年、アイゼンハワー大統領が心臓病に倒れたエピソードから議論をはじめている。大統領を治療した専門医のポール・ホワイト博士は、心臓病予防にダイエットがいかに重要かを訴えた。塩や砂糖、脂肪をひかえ、健全な心血管機能を維持することが心臓病予防の鍵になる。
 心臓病が死因の一位をしめる国で、「健康食」が社会の常識になった。

 その10年後にはじまったのが「エアロビクス」ブームです。
 健康には運動どれほど重要かを、NASAの科学者ケネス・クーパー博士が提唱し、本がベストセラーになった。それまでは日常的に運動する人が24%しかいなかったのに、60%になり、ジョギングする人は10万人から3千4百万人にまで増えている。
 ダイエットもエクササイズも、身体の健康に革命をもたらしました。

 おなじような革命を、こんどは身体ではなく心に、脳にもたらすべきだとニューポート教授はいいます。
 塩分や糖分、油脂にまみれた超加工食品やスナック菓子が身体に悪いように、ネットも脳にとっては超加工食品のようなもの。
「人間の認知能力の顕著な低下は、2010年代なかばにはじまっている。スマホが普及し、デジタル文化が爆発的に広がった時期だ。ティクトクやインスタグラムのような短い動画を流すサイトは、低い認知力、低下した集中力と結びついている。2023年の実験で、人は部屋のどこかにスマホが見えるだけで集中力を失うことがわかっている」

 ではどうすれば弱った脳は鍛えられるか。集中力がもどってくるのか。
 まず考えられるのは読書です。認知神経学者のマリアンヌ・ウルフはいっている。
「深い読解は、洞察と創造的思考にいたる」
 1日に本を数十ページ読めば、1万歩歩くのとおなじ効果があるかもしれない。
 ありきたりの指摘だけれど、認知力を保つ王道でしょう。
(2026年3月30日)