スズメバチとの戦争

 グローバル化のせいで、各地でスズメバチとの戦いが起きています。
 もともと東南アジア原産のスズメバチが、貨物船にまぎれこんで海を渡っている。日本にはむかしからいるけれど、アメリカ大陸では東海岸、西海岸の双方で水際の戦いがつづいています(We’re Fighting Satan’: The War to Save Bees From a Hornet Invasion. July 13, 2026. The New York Times)。

 イギリスがスズメバチを水際で阻止すべく、官民あげて戦っていることはこのブログでも伝えました(2025年9月1日)。
 アメリカの西海岸では2019年、最初のスズメバチが目撃され、徹底的な根絶作戦で2024年、撲滅を宣言しています。いま問題になっているのは東海岸で、ジョージア州では2023年、最初のスズメバチが目撃されました。ジョージアとサウスカロライナの2州に、ツマアカスズメバチという小型のスズメバチが広がっています。

ツマアカスズメバチ

 このあたりはアメリカ有数の養蜂地帯で、サウスカロライナだけでも2万4千か所もの養蜂場がある。この豊富なミツバチを捕食し、蜂蜜を奪い、スズメバチは繁殖しています。クレムゾン大学の養蜂所検査官、ブラッド・キャヴィンさんはいいます。
「ここはミツバチだらけ、スズメバチにとって天国だ」

 スズメバチ対策の基本は、巣の駆除です。
 キャヴィンさんたちは、まずスズメバチを何匹かつかまえる。ペットボトルに特性ジュースを入れたワナでおびき寄せるのです。ことし設置したワナは4300か所。これでつかまえたスズメバチに米粒大の発信機をつけて放すと、発信機を追跡することで巣のありかがわかります。発見した巣は2024年には16個、ことしは6月までにすでに345個にもなりました。

スズメバチの巣(Credit: cyanocorax, Openverse)

 キャヴィンさんの仕事は巣を見つけるまで。スズメバチの巣の駆除は、「ターミネーター」とよばれる専門業者が請け負います。
 防護服のターミネーターは巣の入口をスポンジでふさぎ、数千匹のスズメバチが入った巣をそのままプラスチック容器に入れてしまう。この容器を丸ごと冷凍すると、スズメバチの全個体を確実に殺すことができる。殺虫剤よりこのほうがずっと環境にやさしいといいます。

 とはいえ、これでスズメバチは根絶できるのか。
 サウスカロライナ州は人が近寄りがたい湖沼地帯も多く、全域でスズメバチの巣を見つけるのはむずかしいでしょう。日本とおなじように、アメリカ東海岸はスズメバチと共生せざるをえなくなるのではないか。
 人間よりもむしろミツバチにとって、受難の時代の幕開けでしょう。
(2026年7月17日)