アラスカの海から、ズワイガニが消えてしまった。
ご多分にもれず地球温暖化のせいだといわれています。しばらく前にはキングサーモンが不漁というニュースがありました。こんどはカニ。気候変動はアラスカの海も変えています(Alaska’s snow crabs have disappeared. Where they went is a mystery. August 21, 2022, The Washington Post)。
アラスカでは長年3種類のカニが獲られてきました。
タラバガニ、ズワイガニ、オオズワイガニ。このうちカニの王様、タラバガニの漁獲量は長期低落がつづいています。いま有名レストランで大きなタラバガニは、1ポンド半のものが199ドルもするとか。
それにくらべればズワイガニは1ポンドものが25ドル、タラバにくらべれば庶民的だと人気がありました。漁獲量もそれほど落ちることはなく、カニ産業の柱だったのです。
そのズワイガニが2021年、海底から消えてしまった。
まったくいなくなったわけではなく、漁獲が90%も減ったのだそうです。ズワイガニ漁で生計を立ててきたアラスカのカニ漁師は商売上がったりで、手持ちの船を売却したり転職する人も出てきた。
国立海洋大気局の専門家、ボブ・フォイさんはいいます。
「何が起きたかの正確なデータはない。わかっているのは、2019年に異常な熱波があり、多くの魚類がこれまで知られていなかった海域に移動したことだ」
魚種によっては漁獲に急激な変動がありました。でもカニは魚のように自由に移動できないから、どこかに移動していなくなったわけではない。
「急激な大量死が起きたのかもしれない、ベーリング海で」
ズワイガニは日本でも貴重品。アラスカの製品が入ってくれば多少は楽しめると思っていたのに、それももう絶望的かもしれません。
カニ酢のような料理が幻になるんだとしたら、悲しい。
かつてスーパーに並んでいたカニ缶は、数年前から現物がなくなり、かわりに商品札を見かけるようになりました。万引き対策だったんでしょうか。最近ではもう商品札も置いていない。カニ缶は売り場からなくなってしまった。
カニ缶が消えただけではなく、カニそのものが消えつつあるのかもしれません。
(2022年8月25日)