MAIDの道なかば

 MAID(医療幇助死)が、ニューヨーク州で合法化されます。
 ニューヨーク州民は、合法的に自分の死を選べるようになった。終末期の患者にとっては救いになることもあるでしょう(By September, Nearly a Third of Americans Will Live in States With Legal Aid in Dying. May 30, 2026. The New York Times)。

 MAIDは「Medical Assistance In Dying」の略で、MAiDとも表記される。ぼくは医療幇助死と訳しますが、法幇助死(Legal Aid in Dying)や自殺幇助など呼び方はいろいろです。それぞれ方法も考え方もちがうけれど、医師や看護師の助けをえながら患者が自分で死ぬことを合法化しています。

 ニューヨーク州は議会でMAIDが成立し、8月から実施されることになりました。同様の法律がイリノイ州でも9月から実施されるので、アメリカはこの秋までに13州でMAIDが合法化されます。
 すなわちアメリカ人の3分の1が、MAID法のもとで暮らすことになりました。

 MAIDの流れは確実に広がっています。
 中心になってきたのは患者でした。ニューヨーク州のJ・ネザーランドさんは、乳がんが再発して転移し、治癒の見込みはありません。でも運動したおかげでMAIDが可能になった。自分の場合、最期にMAIDを実行するかどうかはわからないけれど、そういう選択肢があることで安心できるといいます。

 医療幇助死は多くの州で可能になった。でも実行する人は少ない。これがアメリカの現状のようです。
 MAIDで亡くなる人は死亡者の1%程度とされる。カナダの3%、安楽死・尊厳死を世界で最初に合法化したオランダの6%にくらべてかなり低い。
 理由のひとつは厳格な要件でしょう。
 幇助死は、万にひとつもまちがいがあってはならない。だからアメリカでは厳しい条件が課される。MAIDの前に亡くなる患者が少なくありません。
 このため、MAIDを認めた州はいずれも何度か法律を改正し、要件をゆるめています。しかし問題は起きていない。

 MAID、あるいは尊厳死は、ヨーロッパの一部の国が先行しカナダやアメリカのリベラルな州がつづいている。これに対し日本は法律や議論を避け、事実上の安楽死が少なからず行われているのではないかと推察される。
 それでいいのかと、そこはかとない不安があります。
(2026年6月5日)