そこまで来たAI

 AIの登場で、大学教育は根本から見直しを迫られていると書きました(1月9日)。
 すでにいくつもの大学でAI対策が進み、授業のあり方が変わっています。教育現場で実際に「AI問題」に直面している30人の大学の学長や教授、学生たちのインタビューを読むと、これがもうすぐぼくらの日常になることがわかります(Alarmed by A.I. Chatbots, Universities Start Revamping How They Teach. By Kalley Huang.  Jan. 16, 2023, The New York Times)。

 俗っぽい見方をするなら、大学のAI問題は「盗作」の一語に要約されます。
 学生のレポートや論文は、最新のAIを使えば自分の代わりにAIがいくらでも作ってくれる。これは「AIを使って書いた」のではなく、「他人」が書いたものを自分のものだといつわっているから「盗作」だというのですね。
 盗作を防ぐために、手書きやグループワーク、口頭試問の活用といった対策が取られるようになりました。これは書くことより対話を選んだソクラテス時代への回帰ではないかと、文明論的な興味もわきます。

 北ミシガン大学の哲学者、アントニー・オーマン教授は、最近学生が「チャットGPT」というAIを使って論文を出したことから、論文の提出方法を変えました。
 今後学生は、論文の下書きを教室で書かなければならない。そこで使うパソコンには監視ブラウザーを組みこみ、AIを使用させない。その後完成された論文について、学生は下書きのどこをどんな理由で変えたか説明できなければならない・・・こんなふうに盗作を防止するそうです。
 ただし教授はAIを排除はしない。むしろ完成論文を検討するために使いたいといいます。
「これからの授業は、さあみんなで議論しよう、ではなく、さあロボットも入れたみんなで議論しよう、ということになる」

 おもしろいのは、AIを監視するAIが登場していることです。
 なんらかの論文が、AIを使って書いたかどうかを判定するAIがいろいろできている。たとえば「GPTゼロ」というソフトは、特定の論文がAIを使っているかどうか検知します。このサービスを利用するのに、ハーバードをはじめとする大学の教員ら6千人が登録しているというから、すごいなと感心もするし、どうなってるんだろうと頭をひねったりもします。
 もちろんAI側も黙ってはいない。
 いまいちばん話題になっているAI、「チャットGPT」を開発したオープンAI社は、近くそれよりさらに進化した「GPT-4」を発表するとか。これらはいまは英語版だけれど、いずれ日本語版が出てくるでしょう。
 そうなればこのブログもぜんぶ、AIに丸投げできるんじゃないか。
 そこで何が起きるか、ぼくはむしろ楽しみです。
(2023年1月18日)