修理できるスマホ

 このブログで、何度か「修理権」について書きました。
 スマホやパソコンなどの電気製品は、自分で修理できないものが多い。液晶のガラスが破損してもバッテリーがだめになっても、そこだけ直すことはできず「全とっかえ」するしかない。これはメーカーが消費者にどんどん使い捨てをさせ、新製品を売り込むための戦略です。
 そういうのっておかしいでしょ、使い捨てを進めるなんて地球環境に悪いじゃないかと、欧米の消費者が声を上げるようになりました。消費者が自分で修理する権利、修理権を奪うのは許せない、というわけです。

 そういう声に押され、ことし4月、アップルが修理可能なスマホを発表しました。これにつづく形で、サムスンもスマホの修理が可能になったと発表しています。ところがこの修理がなかなかむずかしく、腕に自身のない人はやめた方がいいとワシントン・ポストがいっています(Samsung will let you fix your own phone, if you dare. August 3, 2022, The Washington Post)。

 サムスンが発表した「修理可能なスマホ」は、ギャラクシーS20とS21というタイプです。液晶をカバーするガラスや充電ケーブルを接続する端子の部分など、いくつかの部品を交換できるようになりました。スマホをぶつけてガラスを割ってしまった、というようなとき、消費者はネットで部品を取り寄せ、サムスンの公表した修理マニュアルの手順に沿って作業すれば自分で直すことができる。

ギャラクシーS20

 ところが、です。いざやってみるとたいへんな作業になるらしい。ガラスが壊れたといっても、ガラスだけを取り替えることはできず、ガラスと液晶が一体となった複合部品をそっくり交換しなければなりません。おまけに壊れた部分を外すだけ41もの手順をふまなければならず、新しい「ガラス液晶複合部品」を組み込むのにもおなじような手間がかかる。メカに弱い人はお手上げじゃないでしょうか。
 修理できます、っていうんだったら、もうちょっと「修理しやすい製品」をつくらなきゃ意味ないでしょ、とポスト紙の記者は皮肉っていました。

 てことはつまり、サムスンは消費者がうるさいからとりあえず修理できる製品を出しておこう、でも作業しにくくしておけばほとんどの消費者はあきらめると思ったのでしょうか。だとするなら、なんともなげかわしいことです。
 一方、修理権の運動がない日本ではいまだに「修理可能なスマホ」が手に入りません。ぼくらはメーカーの戦略に踊らされ、古い機種をどんどん使い捨て、新製品を買いつづけるしかない。こっちのほうがずっとなげかわしい事態じゃないでしょうか。
(2022年8月4日)