国連のウイグル報告書が出ました。
ウイグルで中国が「深刻な人権侵害」を行っていると、国連が認定した報告です。
でもウイグル人から見れば、ウイグルで行われているのは民族虐殺です。人権侵害なんてなまやさしいもんじゃない。国連はそこまで踏みこめなかったということでもある。
そうではあるけれど、ぼくは報告書を読んで、中国の強大な圧力に抗して国連もよくここまでまとめたと思いました。報告書のなかの、目を引かれた画像を見てみましょう。
ウイグル自治区、ホタン市にあるイスラム教の礼拝所、イマムアシム寺院の衛星写真です。

2012年には健在だったものが、2017年には破壊されて瓦礫となり、2020年には跡形もなくなりました。

イスラム過激派を排除するという名目で、中国はウイグルのイスラム文化を消し去ろうとしています。瓦礫すらもなくなったことを示す写真を見て、ぼくは中国が人びとの記憶すらも消し去ろうとしていると感じました。
この近傍で、どれほど多くの人びとが人生を、家族を、コミュニティを、そして記憶を奪われたことでしょうか。
もうひとつ、これは出生率のグラフです。

青い線がウイグル自治区、赤い線が中国全体の出生率です。ウイグルでは2017年以来、出生率が5割も低下しています。
この出生率の急激な低下は、中国がウイグル女性に強制している不妊手術と無関係ではないでしょう。
ウイグルで行われている民族抹殺は現実の事態だということを、この折れ線グラフが示しています。
国連の報告書はこうした写真、統計だけでなく、無数にある民間団体、研究機関の調査報告、報道、それにウイグル自治区から逃れてきた40人の詳細なインタビューをもとにしています。それだけの厚みのある報告書だから、さすがの中国もにぎりつぶすことができなかった。
一方で、この報告書は現地調査をしていません。中国が許さなかったからです。がんばってはいるけれど、まんなかが空洞のままの報告となりました。
絶対に現地を見せない。中国の暗黒の決意が報告書の紙背に浮かびます。
(2022年9月2日)