うつ病の家族がいたら

 家族がうつになったらどうすればいいか。
 少し以前の記事を改めて読んだら、大事な視点があることに気づきました。それは家族がうつになったら「自分を守る」ことです。
 家族からではなく、病気から自分を守るというべきでしょうか(How to Help a Partner Living With Depression. Oct. 27, 2022, The New York Times)。

 親や子、夫や妻がうつ病になったらどうするか。スタンダードな5つの項目があげられていました。

・うつについて知る。
 ものごとに興味を失い、食欲が落ちたり眠れなかったり、原因不明の身体の異常が2週間以上つづいたら、うつ病かもしれない。そういう知識があればより適切に対応できる。
・興味を持つ。
 問いかけをつづける。どんな気分か、どうしてほしいか。答えを求めるからではなく、聞くことで相手が自分自身を理解するのを助けられるように。
・限界を知る。
 助けようと踏みこめば逆効果になることもある。けれど助けられなければ罪悪感を覚える。そうならないよう、限界を知って外に助けを求める。
・自分優先
 自分が落ちこまないようにする。うつ病は周囲に「感染」するものだから。
・自分の楽しみを持つ
 自分自身の楽しみの時間を持とう。ちょっとした散歩でも庭仕事でも。それが、病気の家族と向き合う自分を助けることになる。

 こういう対応は、精神科領域の本にはどれにも載っているはずです。うつ病とかかわった人は、自然にこうした技法を体得するかもしれない。けれどそれでうまくいくかといえば、ほとんどの場合それほどかんたんではない。少なからぬ家族が途方に暮れ、希望を失います。
 うつ病を持つ家族と向き合う日常で大事なのは、自分を守ることかもしれません。

 うつ病の妻を持った夫のひとりがいっています。
「こころの底では、ぜんぶ病気のせいだってわかってる。病気になった人が悪いわけじゃないって。でもたいへんだ」
 病気を責め、病気になった家族は責めない。そうはいっても、この病気には振りまわされる。そういうときは、まず自分を救おうということです。それがやがては家族を救うことにもなる。そう期待するしかないということでしょう。
(2023年3月27日)