プーチン同盟の敗北

 プーチン、トランプ、キムジョンウン。
 これにもうひとり、アベシンゾウを加えてもいいかもしれない。
 ある角度から見ると、驚くほどよく似ている政治指導者たちです。
 こういう人たちが上に立つと、ウクライナ相手に戦争しても勝てないんじゃないか。ニューヨーク・タイムズに載ったポール・クルーグマンさんの寄稿を読んで、とりとめもなくそんなことを思いました(Ukraine Deflates MAGA Macho Myths. By Paul Krugman. Sept. 12, 2022, The New York Times)。

解放した地域に国旗を掲げるウクライナ兵

 ウクライナ軍の電撃的な侵攻作戦、ロシア軍の敗走をめぐって、アメリカのメディアには12日以降、多くの論考が出ています。
 そのひとつであるクルーグマンさんの論考は、プーチン大統領のロシア軍とアメリカ右翼保守派を重ね合わせて興味深い。ぼくの曲解を含めていうなら、おおむねこんな論です。

 プーチンもトランプに代表されるアメリカの保守右翼も、その世界観は男性性、マッチョな力への信奉で共通している。それでは現代戦は戦えない。戦いには勇気が必要だが、勇気は賢さと柔軟さが伴わなければならないからだ。
「現代の戦争は現代の経済と似ている。成功は筋力の強さより技能に、知識に、そして提案に対してオープンになれるかにかかっている」
 それがなかったから、ロシア軍は今回再びみじめな敗北を喫したのではないか。

 アメリカでも、右翼陣営にはプーチンへ体制への傾斜がありました。
 トランプ前大統領は戦争がはじまってからもプーチン大統領を称賛したし、右翼論者はロシアの勝利を前提にウクライナへの軍事援助はムダだと主張し、バイデン政権を攻撃してきました。
 そういう右翼は、今回のウクライナの反撃に沈黙しています。
 クルーグマンさんはいいます。
「この戦争はウクライナの自由のための戦争だが、アメリカの価値観と政治をめぐる戦争でもある。ウクライナでの戦争がみじめな敗北に終わったら、ロシアでは何が起きるか。マッチョな男がいつも勝つとはかぎらないとわかったとき、アメリカの右翼はどう反応するか」

 マッチョが肩入れするプーチン、トランプ、キムジョンウン。
 いずれもみな、敵と味方を峻別し、分断対立を好み、多様性よりは統制、包摂よりは排除へと進む人たちです。提案に対しオープンになるなんてことはない。
 ウクライナが戦っているのは、ロシア軍だけではありません。プーチン的なもの、プーチン的な人びとでもある。だとするなら、ウクライナの敵はぼくらの社会にもいるのだと、クルーグマンさんの論考を読み思います。
(2022年9月14日)