人間コンポスト

 樹木葬の人気が上昇中です。ぼくのまわりでも何人かが死んだら樹木葬にしたいといっていました。ぼく自身は骨を粉にしてどこかにまいてもらう散骨がいいけれど、樹木葬も悪くはない。ただその樹木はサクラじゃなくサザンカくらいがいいけれど。
 樹木葬は石の墓より自然で環境にいいように思えます。
 でも日本では、埋葬の前に火葬にしなければならない。大量の石油を使い、ダイオキシンなどの有害物質も出る火葬はあまりエコロジカルではありません。

 樹木葬や散骨より断然いい方法が、アメリカではじまりました。
 人間コンポストです。
 死んだら遺体を上手に腐らせて土と混ぜ肥料にする。骨は粉々にしてやはり土に混ぜる。そうすることで人は草木の栄養になり、ほんとうの意味でゆたかな自然の一部に帰ります。もちろん石油なんか使わないから温暖化とも無縁です(If You Want to Give Something Back to Nature, Give Your Body. December 5, 2022, The New York Times)。

コンポスト(資料映像)

 コンポストというとわかりやすいけれど、これを進めている人たちは遺体の「有機還元法」と呼んでいる。具体的な手順はこうです。
 カプセルのような円筒形の容器の下半分に、木片や草を敷き詰めてベッドにする。
 ベッドの上に、コットンの布で包んだ遺体を安置する。
 遺族は遺体を花で飾り、お別れをする。
 カプセルの蓋を閉め、適度な湿度の空気を流しながら6―8週間放置し、遺体の分解を待つ。
 この間、ときどきカプセルを回転させ上下を混ぜる。
 最後に残った骨は機械で粉砕し、ベッドの土に混ぜる。

 有機分解された遺体は、ベッドの草木とともに最終的には約1立方メートルの「土」になるそうです。
 この土を、故人や遺族の希望に従って墓地や森、山といった自然環境にもどします。法的にはただの土になるので、ニューヨーク州などの場合、どこにどう処分しても問題はない。
 アメリカではすでに5つの州で、この方法による埋葬が認められています。
 遺族のひとりは、静かでいやされるようだったと経験を語っていました。人間コンポストは環境にいいということもあるけれど、この方法を選ぶ人は、死んだら「自分の遺体が自然への恩返しになる」というのが気に入っているようです。

 ぼくは土葬に立ち会った経験があるから、火葬よりは土葬の方がいいと思っています。でも人間コンポストの方がずっといい。日本でも認めてくれないものでしょうか。
(2022年12月14日)