寄付の効用

 国連の難民支援活動に、感銘を受けた。
 こんな意見を、コラムニストのマックス・ブートさんが書いています。国連といっても、その下部組織のUNHCR、国連高等難民弁務官事務所のことです。元上智大学教授の緒方貞子さんがトップを努めたことで、日本人にはなじみがある。でも実際に何をやっている組織か、ぼくらはほとんど知らない。ウクライナの現場からの、UNHCR活動報告です( I traveled across Ukraine with a U.N. refugee agency. Here’s what I saw. By Max Boot. February 27, 2024. The Washington Post)。

 ブートさんはウクライナの首都キーウで、ロシアのミサイル攻撃を受けた現場を見ています。爆撃された高層アパートで4人が死亡、39人が負傷、何百人もが住む家を失いました。しかし2日後にはもう、近くの体育館に設置されたUNHCRの救援センターでほとんどの被災者への食料や医薬品、避難場所の提供などを終えていました。

 爆撃と救援のくり返し。そのたびに現場にかけつけ、UNHCRはこれまでに263万の難民を支援してきたといいます。破壊された家を建て直し、寒さ対策に毛布を用意し、前線に発電機を送り、食料や医薬品をわたす。
 ウクライナにはUNHCRの370人の職員がいて、ときに危険を冒しながらの難民支援に奔走しています。リーダーのスウェーデン人、カロリナ・リンドホルム・ビリングさんは「残酷な戦争が日々人びとを苦しめているけれど、支援が彼らを支えている」といい、夫と子どもはスウェーデンに避難させたけれど自分は現場にとどまっている。
 国連やUNHCRは多くの問題を抱えているけれども、ウクライナで出会ったUNHCRの職員には「感銘を受けた」とブートさんはいっています。

破壊された橋の下を避難する人びと(キーウ郊外、2022年)
(Credit: manhhai, Openverse)

 さてしかし。
 このたぐいの話に、ぼくらはふだんほとんど興味を持ちません。難民がいる、国連が支援する。当たり前でしょ、と。ウクライナには同情する、でもぼくらにはどうすることもできない。

 そうではあるけれども、せめて寄付くらいしたいと、ぼくはネットを調べたことがあります。いろいろ支援団体があり、どこに寄付したらいいかわからない。迷いながら、でもまあUNHCRなら大丈夫かとしばらく前に2万円をクレジットカードで寄付しました。それがウクライナの誰かの毛布になったかもしれない。ならなかったかもしれない。
 寄付したからといって、ウクライナを助けたなんて思わない。自分の気休めです。でもひとつ変化があるとするなら、寄付したことでUNHCRに、難民に、以前より関心を持つようになったということがあります。だからブートさんの記事も読む気になりました。ふだんだったらスルーしてしまうところを。
(2024年4月12日)