汚れたアボカド

 やっとわけがわかったけれど、ちょっと悲しい。
 アボカドをめぐる話です。
 だいぶ以前からアボカドが安くなってありがたいと思っていたけれど、これにはちゃんと裏がありました。世界一の産地メキシコで、アボカド産業は反社会勢力による乱開発と違法行為が横行している。よろこんでばかりではいけなかったのです(Americans Love Avocados. It’s Killing Mexico’s Forests. November 28, 2023. The New York Times)。

 先進国の食品はしばしば遠い国で、自然や社会を破壊してできます。アマゾンの密林を消しさる牛肉、ボルネオの環境を破壊するパーム油、インドネシアの違法伐採でできるコーヒー。延々たるリストに、メキシコのアボカドが加わりました。

“汚れたアボカド”の舞台は、メキシコ中部のミチョアカン州です。
 おいしくて栄養豊富なアボカドは、アメリカでの消費がこの20年で3倍に増えました。その90%はメキシコ産で、いまや4千億円にまで拡大したアボカド産業に組織暴力が群がっています。

 ミチョアカン州には天然のアボカドがあったけれど、それを工業的に生産するようになると景観も社会構造も一変します。自然の松林を切り払い、どんどんアボカドに植え替える。地元農民を追い払い、違法伐採が横行するようになった。さらに問題なのが水です。アボカドは大量に水が必要で、自然林の松の14本分に相当する水が必要。違法アボカド畑ができると、同時に違法な井戸が掘られ、そこから広範なパイプ網が張りめぐらされる。地元農民は、トマトやトウモロコシのための水を奪われました。

 環境団体CRI(Climate Rights International)などによると、アボカド生産に入りこんだ反社会勢力は、規制を求める農民や役人、地域社会の指導者を脅迫し、誘拐や暴行、銃撃の標的にしている。被害者のいくつもの証言がありました。けれど麻薬戦争に追われるメキシコでアボカドの違法を取り締まる動きはほとんど見られない。賄賂が横行し、規制するはずの役所は腐敗して取り締まりができません。誘拐され、暴行された住民のひとりはいいます。
「あなたが食べるアボカドは、血にまみれている」

 ニューヨーク・タイムズが報じたのは、アメリカ人が食べるアボカドの話です。でもきっとおなじことが日本のアボカドについてもいえる。輸入アボカドのほとんどはメキシコから来るので。この報道を見てぼくは、そうか、こういう背景があってアボカドは日本でも安く大量に出回るようになったんだと、ようやく謎が解けた気分でした。
 だからといってすぐアボカドをやめるわけにもいかない。日本政府はあてにならないから、この報道を機にせめてアメリカ農務省が規制に動いてくれないものかと思います。
(2023年12月5日)