なかったことにしない

 自分たちの歴史の汚点を見直す。
 誰にとってもむずかしいことです。植民地時代の罪業となればなおさら。そんなことはなかったとか、寝た子を起こすな、となってしまう。
 でも、それ、まずいだろう。
 問題を明るみに出すべきだ、少なくとも私は事実を知りたいと、ご本人がそういったかどうかはわからない。でもイギリスのチャールズ国王が承認しました。イギリス王室が過去、アフリカの奴隷貿易にどこまでかかわったかを明らかにすることを。さすがイギリス王室(King Charles supports study into Royal Family slavery links. April 6, 2023. BBC)。

バッキンガム宮殿

 バッキンガム宮殿はこのほど、17世紀から18世紀にかけての奴隷貿易とイギリス王室の関係について、第三者機関が進める調査に協力すると発表しました。この調査はマンチェスター大学の歴史学者、カミラ・デコーニング博士らが民間団体の歴史王宮協会とともに進めることになっており、バッキンガム宮殿はこの調査に、王室が所蔵するすべての資料を提供するということです。2026年までかかる予定です。

 チャールズ国王はかねてから、奴隷貿易については「深く悲しいことと思う」と述べており、バッキンガム宮殿のスポークスマンによれば「洞察と決意をもって」この問題の理解を深める考えです。またウィリアム王子も昨年ジャマイカを訪れた際、奴隷制は「起きてはらなないこと」「消すことにできない歴史の汚点」と述べており、国王とともに解明を進める考えだといいます。

 イギリス王室と奴隷貿易のかかわりは、最近ガーディアン紙が証拠となる新資料が発見されたと報じました。これは1689年、当事のウィリアム三世が奴隷貿易に投資していたとされる資料です。この報道を受けてイギリス王室が、問題の解明に向けて外部の識者による調査を容認したということでしょう。「歴史の汚点」から逃げ隠れするのではなく、むしろ主導権を取って積極的に解明していこうとする姿勢がうかがわれます。

 300年も前の話なんだから、もうどうでもいいでしょと、ついぼくらは考えてしまう。でもイギリスではそうしない。もちろんそこには国内にいる多数のアフリカ系国民への配慮もあるでしょう。またアメリカで人種問題が新たな段階に入り、奴隷制とかかわったワシントンやリンカーンといった「建国の父」さえも見直す動きが進んでいることを考えれば、大むかしの話といっても無視することはできない。そうした政治的な思惑があったとしても、根底には歴史から目をそらしてはならないという倫理があります。

 自分たちの歴史を問いつづける。その姿勢が社会に真の力をもたらします。
(2023年4月7日)