オープンなAI

 世界最先端のAIを作る「オープンAI」で17日、たいへんなお家騒動がありました。
 トップのサム・アルトマン(最高経営責任者)が突然解任され、巨大テック体制の崩壊かと全世界に衝撃が伝わったのです。が、わずか4日後にアルトマンCEOは復帰、“クーデター”は未遂に終わりました。AIの開発をめぐる積極派と慎重派の対立だったようですが、大もとにはオープンAIの成り立ちそのものがあったと、コラムニストのデビッド・ブルックスさんが指摘しています(The Fight for the Soul of A.I. By David Brooks. Nov. 23, 2023. The New York Times)

 オープンAIは、非営利団体としてはじまりました。
 AI、人工知能への知的な興味にかられた人びとがアルトマンCEOらのもとに集まってできた組織で、金もうけを目的としてはいませんでした。
 しかし彼らが開発した「チャットGPT」は、画期的な性能で世界を驚かせ、いまや巨額の投資やその希望が殺到しています。オープンAIは、非営利団体が率いる超有望な営利企業になったのです。

サム・アルトマンCEO(オープンAI)
(Credit: TechCrunch, Openverse)

 ぼくがこの問題の全体をこれまでより明瞭にわかった気になれたのは、ブルックスさんが5月に訪問したオープンAI内部の描写からでした。
・・・おれたちが世界を変えてるんだという鼻息の荒さは、ここにはない。ダイアン・ユーン副社長は「ここで働いているみんなを動かしているのは情熱なんです」という。私はこういうハイテク企業に行くと、そこにいる人はみんな専門知識はあっても、人間のいちばん大事なことはわかってないんじゃないかと軽く見る気持ちを抱いたものだ。だがオープンAIはちがった。ユーン副社長はシェークスピア劇の役者だったし、研究者のなかにはジュリアード音楽院の出身者もいれば哲学や言語畑から来たものも、また経済学者として連邦準備制度から移籍したものまでいる。私は彼らを見下していた自分の高慢さを恥じたものだ・・・

 オープンAIで、ブルックスさんは希望すればほとんどの人にインタビューできた。名前のとおりオープンな文化が維持されている。それはオープンAIが学術研究の気風を受けつぎ、いまなおコマーシャリズムよりアカデミズムが優勢だということでもある。だからお家騒動も起きたし、AIをめぐる安全論争もつづいているということなのでしょう。

 とはいえ、この文化は長続きはしないだろうとブルックスさんはいいます。
・・・ここにはあまりにも多くの金が流れこんでいる。彼らはいまは情熱にかられた研究者かもしれないが、いつ、そうとは知らずに金もうけ競争に巻きこまれているかはわからない。彼らはAIの安全ということについても一致しているわけではない・・・
 AIそのものは有用も悪用もできる。使い方次第で、この世界は光にも闇にもなります。オープンAIのオープンな文化が、少しでも長続きすることを祈りましょう。
(2023年11月30日)