ジェンダーのない制服

 絶望的です。日本の遅れは。
 世界経済フォーラムが21日に発表した2023年版「ジェンダーギャップ報告」によると、日本はジェンダーギャップ、男女不平等の広がりが主要146カ国中125位でした。要するに男女平等が進んでいない。前年は116位だったのがさらに順位を下げている。まるで封建時代の家父長制がそのまま残っているかのようです。
 原因は「えらそうなオッサン」でしょう。古い価値観の中高年男性がぼくらの社会を牛耳っている。これをなんとかしないかぎり希望はありません。

世界経済フォーラム
「ジェンダーギャップ報告書 2023年版」

 じゃあどうするか。
 政治だの経済だの、巨大な枠組みはビクともしない。だったら辺縁の小さなところから少しずつオッサン文化を侵食していったらどうだろうか。オッサンが「ちょっとだけイラッとする」ことをする。気がついたらそれが大きな流れになっている、というような。

 そんなことを考えたのは、オーストラリアのカンタス航空が乗務員の制服をよりジェンダー・フリーにすると聞いたからです。男だか女だかわからない乗務員がいたら、「なんだ、コイツ?」と、日本のオッサンはちょっとイラッとするんじゃないか。こういうの、どんどん進めてほしい(Qantas: Australian airline relaxes gender-based uniform rules. June 9, 2023. BBC)。

 カンタス航空はこれまで、男は男らしく、女は女らしくという古い価値観を引きずっていました。労働組合にも批判されていたために、性別、ジェンダーにとらわれない「21世紀の制服規則」を決めたということです。
 新規則のもとでは、男性も化粧ができる。ロングヘアも認められる。従来は女性にしか認められていなかったアクセサリーもOK。一方女性はハイヒールでなくてもいいし、「女らしい小さな腕時計」でなくてもいい。ただし男女ともロングヘアのときはポニーテールにするか、団子にする。女性はスカートをはくときはタイツかストッキングを着用。
 あたらしい規則は客室乗務員だけでなく、操縦席にも適用されます。ただし入れ墨のある人は、それを服で隠すという規定は残っている。

 カンタス航空がとくにリベラルなわけではなく、オーストラリア社会がこうなることを求めた結果でしょう。カンタス航空は従来よりジェンダーフリーに近くなり、多様性の空気が広がります。
 いずれ日本の航空会社にも波及します。そうなれば「なんだ、コイツ?」とイラッとしたオッサンも、しょーがねえなと舌打ちしてやり過ごすようになる。その先にあるのはLGBTQが当り前の社会、だといいけれど。
 いやまあ、そんなことでオッサン支配は崩れませんよね。そう思う一方でぼくは、このくらいしか策がないと思ってしまう。それほどにぼくらの社会は出口がないのです。
(2023年6月23日)