不健康な期待

 ミャンマーの辺境で何か起きているらしい。
 これまで周辺の山岳地帯で“けちらされて”いた反政府勢力が、いつのまにか力を蓄え、一部で政府軍を“けちらして”いる。BBCが、反政府武装勢力はミャンマー軍を「打ち負かす」かもしれないといっているのは驚きです。中身を読むとなるほどという気もする(A turning point in Myanmar as army suffers big losses. Nov. 8, 2023. BBC)。

 事態が動いているのは、おもにミャンマー東部で中国と国境を接するシャン州です。ここで10月末、数十もの政府軍拠点が反政府武装勢力に制圧されました。中国との国境を管理する部署も反政府側の支配下におかれ、中国との貿易も混乱しているらしい。
 これはミャンマーの軍事政権にとって、2021年にクーデターで独裁体制を確立して以来もっとも深刻な打撃と見られます。

軍政に抗議するミャンマー市民(2021年)
(Credit: Ninjastrikers, Openverse)

 ミャンマーの独裁者が民主勢力を弾圧し、多数の市民を殺戮しただけでなく、地方に逃げ込んだ反政府勢力を一掃しようと無差別の襲撃や爆撃をくり返してきたことは、これまで何度もこのブログに書きました(2023年4月13日ほか)。航空機による爆撃にはロシアや中国の軍用機が使われ、無数の市民が犠牲になっている。
 これに対し、散り散りバラバラだった地方の武装勢力が連携して共同作戦を取りはじめたらしい。周辺各国から武器を手に入れ、少数民族が合流するなど、反政府勢力はある程度まとまった実力を蓄えた。この力で、シャン州の北部地域を武力制圧できたのでしょう。

農作業に向かうシャン州の住民(2012年)
(Credit: -AX-, Openverse)

 注目すべきは、ミャンマーの軍政を支えてきた中国が、今回はどうも動いていないということです。
 背景はとても複雑らしい。シャン州の山岳地帯は麻薬の世界的な生産地で、闇の勢力が跋扈している。莫大なカネと麻薬がミャンマーの軍政とつながっているのを、かねて中国はこころよく思っていなかった。それで今回は政府軍を助けなかったのではないか、という推測があるようです。真相と実態は誰にもわかりませんが。
 今回シャン州で軍事的にめざましい成果をあげた「兄弟同盟」と呼ばれる武装勢力は、これまでミャンマーの軍事政権に対抗してきた反政府組織「NUG」とは別の組織です。つまりミャンマーでは、軍事政権、兄弟同盟、NUG、少数民族や中国といった多くの勢力がうごめき、その結果として今回の軍事的な変動があったらしい。

 反政府勢力はミャンマー軍を「打ち負かす」かもしれないというBBCのレポートは、バンコク発です。記者は現地を取材していない。でも期待は理解できる。軍事衝突に期待をかけるのは不健康だけれど、気持ちはいつも3本指を掲げていたい。
(2023年11月10日)