米が同性婚合法化へ

 同性婚を合法化する動きが、アメリカ議会で進んでいます。
 26年前、アメリカでは「結婚防衛法」という法律をつくって同性婚を認めませんでした。結婚は男女のあいだでしか成立しない、としたのです。
 しかし先週、アメリカ議会下院は「結婚尊重法案」を可決し、相手がどんな性別、人種、民族でも結婚できると宣言しました。
 保守共和党も一部議員が賛成にまわり、267対157で“同性婚容認法案”は下院を通りました(House passes protection for same-sex, interracial marriages with bipartisan support. July 19, 2022, The Washington Post)。

 同性婚は多くの州で合法化され実態としてはかなり進んでいますが、国レベルで法案ができるのは画期的なことです。下院を通った法案は、上院でも可決される可能性が出てきました。
 LGBTQの運動を進めてきた人たちにしてみれば、自分たちはずっと存在してきたし、法律がどうなろうと自分たちは変わらない。でも国レベルで法案の審議がはじまったのは大きな進歩と歓迎しているでしょう。

 結婚「防衛」法から、「尊重」法へ。結婚、ジェンダー、家族のあり方はこの四半世紀で大きく変わっています。
 日本もあと20年くらいすればこうなるでしょうか。同性婚容認どころか夫婦別姓も認めず、「家族とは伝統的な家父長制でなければいけない」なんていう人が政治を牛耳っているこの社会で、家族の多様と個人の自由はどこまで広がるでしょうか。

米最高裁判所

 そんなことを思いながらニュースを読んでいたら、アメリカにはアメリカの苦渋があるとも知りました。
 LGBTQでは先進のアメリカも、中絶では混乱している。先月、最高裁が過去の判例を覆し、中絶の権利を否定したため多くの州で中絶ができなくなっています。しかも判決のなかで保守派のトーマス判事が「中絶だけじゃなく、同性婚や避妊についても見直すべきだ」との意見を書いている。何だよこれ、と多くのリベラルが目をむきました。
 中絶を禁止するだけじゃなく、同性婚も避妊も、経口避妊薬までも禁止する気か?

 冗談じゃないと、最高裁の動きを牽制して立ち上がった民主党が、まず「同性婚容認法案」を出したようです。このあとには「避妊支持法案」も用意されているとか。
 保守共和党は民主党の政治ショーだと批判するけれど、ぼくには立法と司法がギシギシと音を立てて対立しているように見えます。
(2022年7月25日)