ここまで来た微小プラ

 ぼくらはもうプラスチックなしでは暮らせない。
 そのプラスチックが、身体のなかに入ってしまったのをどうすればいいんだろう。子どもたち、孫たちの世代はさらに多くのプラスチックが蓄積される。将来、何が起きるかはわからないという漠然たる不安がつのります(Which proteins contain the most microplastics? Jan. 12, 2024. The Washington Post)。

 問題になっているのは「マイクロプラスチック」です。
 微小プラスチック。大きさが1マイクロメートル(1ミリの千分の1)から5ミリメートルまでの、ごく小さいプラスチック粒子です。いまや世界中の自然環境に、南極の雪のなかにまで見られるようになりました。
 その微小プラスチックが、魚介類の消化器官に存在することはすでにわかっていました。今回報告されたのは、消化器官だけではなく、切り身にもあまねく存在することです。それも魚介類だけではない、牛、豚、鶏肉の90%から微小プラスチックが検出されている。ぼくらは魚や肉を食べるかぎり、微小プラスチックを食べないわけにはいかないのです。

 これを報告した非営利団体、OC(オーシャン・コンサーバンシー)やトロント大学の研究者によれば、プラスチックに汚染された肉類を食べることで、一般的なアメリカ人のおとなは1年間に1万1千個の微小プラスチックを摂取している。
 それで、何が起きるのか。
 じつは微小プラスチックの健康被害はよくわかっていないと、OCの科学者ジョージ・レオナードさんはいいます。
「パニックを起こす必要はない。いまはまだ。でもさらなる研究が必要だ」
 いまはまだよくわかっていない。けれど微小プラスチックは今後さらにぼくらの身体のなかに蓄積されるので、健康被害があるのかないのか、あるとすればどんなものか、研究を進めることが緊急に必要だとWHOはいっています。

 もしかしたら、心配するほどのことはないかもしれない。
 でも、もし健康被害があるとすればその規模は計り知れない。
 イエール大学のポール・アナスタス教授はいいます。
「われわれは何百年もの耐久性のある物質を作ってきた。そういうものを作ってしまったということがまちがいなのかもしれない」
 その一方で、いまは自然環境で消滅するプラスチックもあると教授は指摘します。社会経済のさまざまなしくみでプラスチックを減らし、減らせない分も代替プラスチックへの転換を可能なかぎり進めるべきでしょう。微小プラスチックの影響が解明されない以上は。
(2024年1月18日)