台湾が1番

 台湾はますます過激になっている。
 との思いを、習近平主席は強めているのではないか。
・・・真に強くゆたかな国は、中国共産党のような正しい政党の正しい指導でしか実現できない。中国がすべての面でアメリカよりすぐれているのは一目瞭然。だのに台湾は民主主義などという幻想にあおられ、中国にたてつく総統を選んでいる。これはもう軍事力しかないだろう・・・

 1月13日の台湾総統選挙で、民進党の頼清徳(ライチントー)候補が当選したのを見て習主席はそんなことを思ったのではないでしょうか。これで台湾は、蔡英文(ツァイインウェン)総統につづき12年、民進党政権が「反中国共産党」路線を歩むのですから。

台湾次期総統に選出された頼清徳氏
(Credit: 總統府, Openverse)

 今回の台湾総統選挙に、欧米のメディアは日本より熱い視線を注いでいました。
 多くの報道と論評が、この選挙で台湾の人びとは自分たちを「中国人より台湾人だ」と自覚する傾向を強めたと伝えています。
 そういう動きは全体主義国家である中国にとって、何よりも目ざわりなことでしょう。
 中国の最大の障害は、台湾のちっぽけな軍事力でも、その背後にあるアメリカの脅しでもない。台湾の民主主義です。「全体」をきらう、自由な人びとの思いです。その思いが、総統選挙で再確認されてしまった。

 今回の総統選挙で印象に残っているのは、「台湾はアジアでナンバーワンの民主主義」というBBCの報道でした(A spooked and lonely Taiwan looks for new friends. Oct. 15, 2023. BBC)。より正確にいうなら、BBCが引用したイギリスのEIU、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(Economist Intelligence Unit)という研究機関のレポートです。

 EIUは毎年、世界各国の民主主義の度合いを数値化しランク付けしている。その2022年版を見ると、アジア各国のなかで民主主義がもっとも進んでいるのは台湾でした。
 台湾はいまや、中国との対比で民主的なだけでなく、アジア全体で民主主義のリーダー、模範となっている。政治の透明・公平さ、女性の進出、LGBTや先住民の尊重といった多くの面で、日本より先をゆく、全世界でも10番目にランクされる民主主義です。

 ちなみにEIUのリストで、世界167カ国・地域中、ナンバーワンはノルウェー、次はニュージーランドでした。最下位はアフガニスタンです。もっとも、このリストで日本が16位、韓国が24位というのはちょっと疑問です。日本って韓国より民主化度が高いのかなあと、ぼくは首を傾げてしまうので。
 いずれにしても、台湾でほんとうの民主主義が根づき、発展していることに中国は困惑し、放置できないとの思いを強めているでしょう。台湾がチベットやウイグル、香港の運命をたどらないようにと願うばかりです。
(2024年1月19日)