はさがけ

 9月17日は浦河ひがし町診療所の稲刈りの日です。
 その準備のひとつ、「はさがけづくり」が行われました。刈り取った稲を干すための柵、稲架(はさ)をつくる作業です。
 よく晴れた暖かい午後、絶好の作業日和にめぐまれ、診療所デイケアのメンバーやスタッフら20人ほどが参加しました。

前歯を治療し笑顔になった順毛めぐみさん

 稲架は田んぼの真ん中に立てるので、その場所を確保するために稲を一部刈り取らなければなりません。この稲刈り作業、刈り取った稲を紐でくくり束にする作業、田んぼのなかに稲架の骨組みの柱を立て組んでいく作業。そうした作業にそれぞれが勝手にとりかかります。手先や身体を動かしながら、合間にたあいのない冗談、つぶやき、やりとりがくり返され、ときに笑いの波が伝わる。世の中にこれ以上はないというべき平和な光景です。

 ちょっと動くと汗ばむ陽気のもとで、そよ風に吹かれながらの2時間あまりでした。
 それをまだ赤くなりきっていない赤とんぼがながめています。

 診療所の米作りはことしで8年目。
 担当の木村貴大ワーカーは、ことしは稲穂がよく垂れているといっていました。つまり重い実がついている。この分なら例年並みか、それ以上の収穫になるでしょうか。でも廣瀬利津子看護師は、いやあ数が少ないわ、といっていました。稲穂1本あたりの実が少ないという意味です。だから一般農家から見たら微々たる収量にとどまる。
 それがひがし町診療所のコメ、「幻米」の特徴のようです。

力仕事の主役、水野琢磨さんと田中孝治さん

 8年間、無農薬、無肥料、おなじたんぼで継代栽培してきた。収量はきわめて少ないけれど味はきわめていい。それが幻米です。ぼく自身は魚沼コシヒカリより、またいまでは地元農家がコシヒカリを抜いたという北海道のユメピリカよりもうまい、と思っています。かならずしもひいき目だけでなく。
 たぶん経済を度外視してつくると、コメはこういうふうにうまくなるんだろうな、と思える味です。ことしもきっとその味が楽しめるでしょう。

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 ということでぼくは今週、横浜から北海道浦河町に移動しました。コロナの疑いで入院していた母が無事退院したので。コロナではなくただの肺炎だったようです。PCR検査も200例に1例くらいまちがいがあると聞きましたが、母の場合がそうだったのでしょうか。真相は不明です。
(2022年9月9日)