ビデオメールの時代

 いまどきの電話マナー、という記事がありました。
 スマホが普及し、ネットやメールが発達してぼくらの電話の使い方は激変した、そういう時代の電話マナーはどういうものか。読んでなるほどと思いつつ、同時にいまのスマホは「ダイヤル電話」の記憶が抜けないぼくらにとって、ほとんど別世界だと思います(The new phone call etiquette: Text first and never leave a voice mail. September 25, 2023. The Washington Post)。

 ことしは電話が発明されてから147年、アイフォンができてから16年になります。いまはもう有線の固定電話はほとんど使われない。スマホも、年とともに多くの人が音声ではなくテキストを使うようになりました。スマホの最新機能は「ビデオ・ボイスメール」というものらしい。メッセージをビデオで送ると、相手は都合のいい時間にそれを再生する。ボイスメールのビデオ版です。

 このビデオメールやボイスメールについて、スマホコミュニケーションの専門家が貴重なアドバイスをしています。大事なことは、まず文字(テキスト、メール)で伝えろと。
 それはボイスメールやビデオメール、つまり声や映像だと、相手は「後で見よう」と思いがちだから。テキストがあれば先にそちらを見る。なるほど、たしかにそうですね。
 スマホ・コミュニケーションの基本は、「気持ちは声で、事実は文字で」。
 親しい人に自分の気持ちを伝えたいときは音声通話で、ときにはボイスメールでもいい。でも事実関係を正確に早く伝えるのは文字です。ショートメールやメールで。
 こみいった話や微妙なニュアンスが求められるときは、まずメールで相手の都合をたしかめ、その上で声の電話をかける。これも、だんだんぼくらの常識になってきました。

 ほお、と思ったのは、エチケット問題の専門家、リジー・ポストさんのコメントです。
「誰かが電話してきてそれにいらつくようだったら、出なければいい。いらつくのはあなたが電話に出てしまったからだ」
 相手が悪い、のではない。じぶんのせい。そういう電話にははじめから出なければいいというのですね。一理ある。

 ポストさんのコメントで気に入ったのはもうひとつ。
「フェイスタイム(ビデオ通話)で相手が出なかったら、ビデオメールを送ればいい。でも誰もがそれでよろこぶわけじゃないことは覚えておくべきだ」
 ビデオメールは、めんどくさい。見るのに時間がかかる。どうでもいいビデオを延々と見なければならないのは苦痛です。このへんは、普及にともなってさらに新しいマナーが生まれるのかもしれません。
 どっちみち、ぼくは使わないからいいんだけれど。
(2023年9月28日)