ホンダワラの嘆き

 カリブ海からメキシコにかけての海域で海藻が大繁殖しています。
 海藻といっても、日本の海岸のどこにでもあるようなホンダワラ系の海藻。これが大西洋で異常繁殖し、メキシコだのフロリダだのの海岸に津波のように押し寄せている。
 温暖化の余波だろうと思ったら、もっと深刻な話のようです。海のプラスチック汚染が引き起こした、「プラスチックと海藻のコラボ」という異常現象らしい。プラスチックと温暖化、人間の二重の罪が海の生態系に異変を起こしています(The real story behind the Atlantic’s record-breaking seaweed blobs. 29th June 2023. BBC)。

 ホンダワラ系の海藻が大繁殖し、メキシコ湾からアフリカ大陸西岸まで、8千キロにもわたって海上を漂う現象は、「大西洋巨大ホンダワラ帯」(Great Atlantic Sargassum Belt)としていまや衛星からも見える規模になりました。

ホンダワラ
(Credit: The Hantu Blog, Openverse)

 科学者が驚いたのは、これらの海藻に大量のプラスチック破片が含まれることです。しかもプラスチックがビブリオ属と呼ばれる一群のバクテリアの絶好の繁殖地になっている。ビブリオ属はコレラ菌や腸炎ビブリオ菌などを含む細菌群で、傷口などから感染するとケガや病気の原因にもなる。フロリダ大西洋大学のトレーシー・ミンサー准教授はいいます。
「ビブリオ属はきわめて活発な細菌で、ことにプラスチックの表面に付きやすい。そういうふうに進化したんですね」
 実際、ビブリオ菌はプラスチックに付着できる遺伝子を持つようになった。また腸炎を起こしやすい遺伝子も持っている。問題はそういうビブリオ菌が、人間だけでなく魚介類も病気にすることです。

ホンダワラが繁茂する海岸(資料映像)
(Credit: wildsingapore, Openverse)

 海藻は小さな魚にとって絶好の隠れ家ですが、そこにビブリオ菌がびっしり付いたプラスチックがあると魚は病気になり、病気の魚が海藻の栄養分になる。その循環で海藻は爆発的に増え、大西洋巨大ホンダワラ帯ができるのではないか。
 ホンダワラの異常繁殖は、2011年ごろから顕著です。これまでは沿岸国が海に排出する大量の農薬のせいではないかなど、さまざまに議論されてきました。そこにこんどは「プラスチックのビブリオ菌」が加わったわけです。そうしたすべての根底に、温暖化、人間の活動があることには疑いの余地がない。

 そういう話を聞きながら、ぼくはひょっとして、とも思います。
 日本の海で起きている異変も、おなじようなメカニズムだろうか。北海道では去年、赤潮の大発生でツブ貝がとれなくなったけれど、それもビブリオ菌だのプラスチックのせいだったのだろうか。
 温暖化を止めろといってもあまりピンとこない。でも「ツブ、なくなっていいのか」といわれればハッとします。ツブ刺しがなくならないよう、なんとかしなきゃ。
(2023年7月7日)