変わるキューバ

 日本は経済で韓国に追い越されただけでなく、社会制度ではキューバよりも遅れてしまった。
 化石のように思えたあの国が25日、国民投票で同性婚を合法化したのです。日本のLGBTQコミュニティは、「いいなあ、キューバ」とため息をついているでしょう(Cuba Approves Same-Sex Marriage in Historic Vote. Sept. 26, 2022, The New York Times)。

 認められたのは同性婚だけではありません。今回国民投票にかけられたのは、同性のカップルが養子を迎える権利や、女性や子ども、高齢者の権利擁護など、さまざまな改革が盛りこまれた100ページにもおよぶ法案でした。なかには、家事は男女平等で行うことという条項まであったといいます。
 この法案が国民投票にかけられ、67%対33%で成立しました。大差での承認です。
 ディアス=カネル大統領は「愛が法律になった」と宣言しました。
「さまざまな世代のキューバ国民がこの法律を待ち望んでいた。それにようやく応えることができた」
 これでキューバは、すでに同性婚を認めたコスタリカやエクアドルと並ぶことになりました。 

 大差での賛成とはいうものの、やはり民意は割れています。
 政府の提案にはだいたい国民の9割以上が賛成するこの国で、今回は3分の1もの反対がありました。カトリック教会はかねてから同性婚に反対だったし、そもそもマッチョな男性文化が強かった社会です。政府主導の改革にも抵抗は強かった。
 建国の父とされたフィデル・カストロ元大統領は、「ホモ嫌い」で有名でした。同性愛者を労働キャンプでの強制労働に送り込んだりもしている。そのキューバが、今回の国民投票で過去と決別し、歴史的な転換をとげたことになります。

 日本とは社会も政治制度も異なる国だから、単純な比較はできない。今回のリベラルな方向への改革は経済の失政隠しだという批判もあります。実際、キューバ経済はこの数十年で最悪ともいわれる。だから、というべきか、にもかかわらずというべきか、キューバのなかには「変わろう」「変えよう」という流れがあった。その流れが今回の歴史的転換に結びつきました。

 一方日本の指導者たちは同性婚どころか、夫婦別姓すらも認めない。同性愛を否定するカルト集団に応援されて政権を維持しているんだから、前世紀そのままです。変わりようがありません。
 いいなあ、キューバ。
(2022年9月28日)