新疆警察ファイル

 BBCが中国によるウイグル弾圧の実態を示す秘密資料を暴露しました。
 中国警察のコンピュータがハッキングされ、決して外に出ないはずの内部資料が大量に流出したのです。この資料がウイグル問題を追求している在米研究者の手にわたり、そこからBBCなどが入手して公表しました。

 そこから浮びあがるのは、恐るべき中国の弾圧と、その弾圧のもとで消えてゆく無数のウイグル人の姿です。過酷な民族抹殺の生々しさに、しばし思考が止まります(The faces from China’s Uyghur detention camps. By John Sudworth. May 23、2022、BBC)。

「新疆警察ファイル」と呼ばれるこの秘密文書は、新疆地区の警察の複数のコンピュータ・サーバーから流出しました。膨大なファイルを調べると、中国がウイグル人を“再教育”という名目で事実上の強制収容所と刑務所に送り込んでいる実態が詳細に浮かびあがります。

 彼らが隔離収容され、刑に服するのは、「ウイグル人だから」という理由であり、「イスラム的だから」という理由です。なかには酒を飲まない、ヒゲが伸びている、などの理由で「イスラムの教義を守っている」とされ、つまりテロリストで有罪だとされた人もいます。
 彼らがその後どうなったかは何もわかりません。

 流出ファイルのなかには、2018年1月から7月にかけて警察が撮影したウイグル人5千人あまりの顔写真もありました。
 BBCはその5千枚の顔写真を並べ、まるで壁紙のパターンのようになった人びとのなかから、何人かの個人に焦点を当てて見せています。ひとり一人に顔があり、名前があり、人生があったのだと。それがある日突然、理由もないままに奪い取られたのだと。

警察秘密資料のウイグル人顔写真
(5月23日のBBCニュースから)

 拘束された人びと、つまり“再教育”すべきウイグル人、“罪人”となったウイグル人の顔が、ぼくらに語りかける。
 ウイグルであることが悪なのですかと。
 そうです。中国共産党にとっては、人が「ウイグルである」ことが悪なのです。
 プーチン・ロシアにとってウクライナが悪であるのとおなじように。

(資料映像)

「新疆警察ファイル」は、専門家の手にわたってから4か月かけてその真実性などが検証されています。BBCでは元北京特派員、ジョン・サドワース記者が資料の分析にあたりました。
 ウイグル現地にも入り、脅迫にあいながらウイグル問題を取材したサドワース記者は、「新疆警察ファイル」を前例のない詳しい暴露資料だと評価しています。

 こういう報道を中国は「世紀のウソだ」と否定しています。それはつまり、中国が恐れている真実が暴露されたということでしょう。
(2022年5月25日)

追記 このニュース、BBCのスクープかと思ったらほかにも資料を入手した報道機関がありました。25日午後、内容をそれに合わせて訂正しました。