町のキツネ

 数日前、浦河の町を車で移動していたら、踏切でキツネを見かけました。
 JR日高本線の、浦河駅近くの踏切です。日高本線は廃線となったので列車はもう通らないけれど、キツネが通るとは思わなかった。

 北海道では町中でもキツネを見かけますが、人間が近づくとだいたい逃げます。だからなかなかいい写真は撮れません。
 この日は車だったので、少し近くまで寄れました。

 キツネは、人間には警戒するけれどどうも車にはあまり警戒心を抱かないようです。
 車を止めて車内から写真を撮っていたら、向こうも踏切の真ん中に座ってこちらを見ていました。

 でもこのキツネ、とてもやせて貧相です。日ごろ見なれたふさふさの姿ではなく、毛にムラがあって抜けかかっている。おそらく冬毛から夏毛に変わる時期なのでしょう。毛がふぞろいなのでことさらあわれに見える。なんだか目つきまで落ちこんでいました。

 近くにもう一匹いたから、夫婦だったのかもしれません。
 2匹で移動していると、たまたまその先にいた猫がギャーと悲鳴をあげ、走って車の下に逃げこみました。猫は犬に出会ってもあんな声は出さないから、やはりキツネのたたずまいに野生の迫力を感じたのでしょう。

 もうちょっと近寄ろうと思って車を降りたら、2匹ともたちまち逃げていなくなりました。
 過疎の町は人の影が薄いけれど、キツネやキジやシカの気配は濃くて、いろんな生き物とともに暮らしているという感覚があります。逃げていったキツネ夫婦にも、「元気でいろよ」と声をかけたくなりました。

 さてこのキツネたちともしばらく会えません。
 きょうぼくは浦河を出て横浜の家に帰りました。つぎに浦河に行くのは7月後半になるでしょう。それまでのあいだに、アール・ブリュット系の表現の場である「ココロはずむアート展」の手伝いなどをします。

 このブログは今月から原則として土日は休みます。
 ときどき見る人を含め、数百人程度に目を通していただいているようなので、ペースを落としながらもつづけたいと考えています。
(2022年6月2日)