遠未来の人口減

 300年後、地球の人口はいまの40分の1に減り、2億人以下になる。
 多くの研究機関が、こんなふうな予測をしているそうです(The World’s Population May Peak in Your Lifetime. What Happens Next? By Dean Spears. Sept. 18, 2023. The New York Times)。
 300年後じゃ関係ないと思うけれど、それ、10世代先のことですといわれると、そうか、孫の孫の、そのちょっと後のことかとも思う。そのときの日本の人口が250万人? ちょっと想像できないけれど、限界集落なんてもんじゃない、どこもかしこも廃墟だらけで、おそらくいまの文明は維持できていないんじゃないでしょうか。

 テキサス大学人口研究所のディーン・スピアーズ博士によると、世界人口は紀元前1千年におよそ1億人でした。それがいま80億人。今後しばらく増えつづけ、2060年代から2080年代に100億人でピークに達する。
 その後、過密な人口はそのまま維持されるわけではなく急速に減少する。さまざまな予測はあるけれど、200年から300年後に2億人以下、いまの40分の1です。人類史を数千年の長さで見渡すと、いま起きている人口爆発は一瞬の出来事かもしれません。

 これは出生率が1.66、いまのアメリカの場合です。
 出生率は複雑ですが、ここではおおざっぱに2.1を基準としましょう。2.1なら人口は維持される。それ以下なら減る。アメリカは1.66だから300年後の人口は40分の1になるということです。日本はずっと低く、1.3程度。
 ちなみにヨーロッパは1.5、東アジア1.2、ラテンアメリカ1.9。
 2を超すのはアフリカが多く、ニジェールは6.8にもなる。そのアフリカも、サハラ以南では出生率が低下しているそうです。

 原因は明らかです。国や社会のちがいを超え、誰もが「小さな家族」を求めるようになった。多くの国で多くの親が、子どもを2人以上持とうとしなくなったのです。どんな政治も経済も、これを変えることはできない。いまは。
 ま、そんなこと気にしてもしかたがないと思ったけれど、そうでないかもしれない。いま生まれた子どもが60歳になるころ、世界人口は100億のピークを迎える。その孫が60歳になるころ、急激な人口減少が戦争のような混乱をもたらしているかもしれません。

 スピアーズ博士は、地球温暖化は最初の報告から具体的な対策が取られるまでに60年かかったと指摘します。おなじく地球規模の大問題である人口減少について、人類はいまから議論するべきだといっている。
 ぼく自身は議論に参加することはないけれど、ほとんど人がいないのってどういう地球だろうかと、SF的な関心を強めてしまいます。
(2023年9月22日)