飛行機の罪ここにも

 飛行機雲が地球温暖化を進めている。
 どういうメカニズムでどれほどかは学者のあいだでも議論があるけれど、温暖化を進めていることに疑いはない。「飛行機雲を出さない飛び方」が、試験的に旅客機で実施されるまでになりました。
 あの白い飛行機雲は悪者か? ロマンチックな話じゃなくなりました(With few easy solutions to their climate problem, airlines rethink contrails. Dec. 18, 2023. The Washington Post)。

 飛行機雲を減らす飛び方を実際に試みたのはアメリカン航空です。35便について、実験的に高度を変更するなどしたところ飛行機雲を54%減らすことができました。
 でもそのために、燃料の消費は2%増えてしまった。
 これをどう評価するかは、かなりむずかしい議論になります。
 飛行機雲が減ったことで、温暖化はほんのちょっとだけ減ったはず。でも逆に燃料をよけいに燃やし、炭酸ガスをたくさん排出してしまった。差し引きプラスだったのかマイナスだったのか。

 そもそも飛行機雲の温暖化効果についてのコンピュータ・モデルが確定していない。
 飛行機雲は、空に広がって地上の熱を反射し、熱を閉じこめます。ことに夜間の飛行機雲が温暖化のおもな要因とされている。ところが「夜の飛行機雲」の影響が、航空機による温暖化全体に占める割合については、研究者によって8%から57%という大きな開きがある。
 要するに計算がむずかしいんだそうです。
 飛行機雲のコンピュータ・モデルができるまでには、あと10年かかるだろうと国連の専門家パネルは見ている。

 そんな不確かな根拠で飛行機の飛び方を変えるわけにもいかないだろうと、ぼくなどは思ってしまうけれど、科学者も航空業界もそうは思っていない。飛行機雲をなんとかしなきゃと、いろいろな動きが見せるようになりました。
 飛行機雲は、旅客機の高度を数百メートル変えるだけでかなり減らすことができる。
 航空会社にしてみれば、その程度のことだったらやりましょう、それで世間の非難がかわせるなら、ということになる。アメリカン航空は35便での実験のあと、規模を広げた実験にとりかかる予定です。これには飛行機雲の動きを衛星写真から読み取るAIが活用され、そこにグーグル社とMIT、マサチューセッツ工科大学が参加している。
 デルタ航空やKLMも検討に乗り出しました。これはEUが各航空会社に、2025年から飛行機雲の影響を調べ報告するように要求したためでしょう。

 たかが飛行機雲、という気がしないでもない。でもそんなことまで真剣に取り組まなければならないほどに、気候危機は緊迫の度を増しているのでしょう。
(2023年12月28日)