5つのシナリオ

 ウクライナ戦争が100日を超えたところで、これからの「5つのシナリオ」をBBCがまとめました。
 ウクライナの戦況をもっとも詳細に把握しているのは、紛争当事国を除けばアメリカとイギリスです。この2国の情報収集力は群を抜いている。そのイギリスの情報に密に接しているBBCの予測は注目に値します(Ukraine war: Five ways Russia’s invasion may play out. June 4, 2022, BBC)。

1)消耗戦
 ウクライナとロシア両軍は今後、数年ではないにしても数か月、激しい戦闘をつづけ、たがいに消耗する。プーチン大統領は西側がいずれ「ウクライナ疲れ」になると見ているが、西側は結束を維持しウクライナへの兵器供給をつづける。どちらも戦争をやめることができない。

2)プーチンの方的な停戦
 プーチン大統領が突然、一方的に「勝った」と宣言して停戦する。ウクライナは停戦しなければ国際社会で批判され、戦争の継続が困難になるだろう。停戦派のフランスやドイツと、戦闘派のアメリカ、イギリスのちがいも表面化する。

3)戦闘の低下
 ウクライナ、ロシア両軍ともに多大な戦死者を出し、武器弾薬もつきて戦争の継続がむずかしくなる。ロシア経済は破滅し、ウクライナも甚大な破壊に耐えられない。西側の支援に限界があると悟ったウクライナが、和平交渉に応じるだろう。

4)ウクライナの勝利
 もしもロシアが東部ドンバス地方を占領できず、多大な損害を被った場合、ウクライナ軍はロシア軍を戦争前の境界まで押しもどすかもしれない。この場合、負けを認めることができないプーチン大統領が核兵器に訴える可能性が増すだろう。

5)ロシアの勝利
 西側には、ロシアはキーウ攻略をあきらめていないという見方がある。ドンバス地方を占領し、そこからふたたびキーウをねらう。それだけの潜在的な軍事力を持っている。

 この5つのシナリオは、部分的に重なった形で進行するかもしれません。
 どうもBBCは、1の可能性がいちばん高く、5の可能性がいちばん低いと見ているような気がします。こういう場合のメディアの書き方の常道として。
(2022年6月6日)