埋葬のグリーン度

「葬儀方法のグリーン度比較」という記事が目に止まりました。
 それによると、火葬も土葬も大きく見ればそれほどの差がない。究極の土葬である「人間コンポスト」に注目し、土葬を日本でも実現してほしいと期待しているぼくは、ちょっとがっかりしています(Comparing green funeral options, from composting to natural burial to water cremation. January 31, 2023, The Washington Post)。

 ぼくらは死んだらどんなふうに埋められるのか。
 日本では選択の余地がありません。イスラム教徒などをのぞき、遺体はすべて火葬にしなければならない。散骨も可能だけれど場所がかぎられるので、ほとんどの場合は骨壷に入れられ、指定された墓地に埋められます。
 でも自由度の高いアメリカでは、遺体を人間コンポストにして自然界の土に返すとか、アルカリ溶液に溶かして水に流すなどの方法が各地で合法化されています。人間コンポスト、平たくいえば遺体を腐敗させ土に返す方法については、このブログでも紹介しました(去年12月15日)。遺体といえども、土や水にすれば自宅の庭にまくことも可能です。

 新時代の埋葬法は、これまでの埋葬が高額なことへの反動でもあるようです。アメリカではいま、がっしりした棺桶で深い穴を掘って埋めれば墓石なしでもざっと200万円かかる。鉄やコンクリートの棺は自然に返ることがないし、火葬にしてもかなりの量の化石燃料を使う。いずれも地球環境に悪いということで、新しい、比較的安価でグリーンな埋葬方法への関心が高まりました。死んだらできるだけエコな方法で葬ってほしいという人が増えたのですね。

 では新しい埋葬法は実際のところどれだけグリーンで、地球環境に害をおよぼさないのか。
 オランダのエリザベス・ケイザーさんという環境研究者がくわしい分析を行っています。それによると、地球環境にもっとも影響が大きい従来の埋葬方法であっても、全過程で起きる炭素排出量はその人の全人生の炭素排出量の0.03%にすぎません。これはオランダ人についての研究なので、生前のエネルギー消費がずっと多いアメリカ人の場合、その率がはさらに低くなるでしょう。記事の最後にはこうありました。
「つまり埋葬だけグリーンにしても、生前にそれほどグリーンな暮らしをしていなかったなら意味がない。温暖化の観点からすれば、大事なのは生きているあいだにどんな生き方をするかだ」

 日本では土葬などのオプションがないので、考えるだけむだかもしれません。そもそも死にまつわることはしばしばタブーのようで触れにくい。でも葬儀や埋葬法ならちょっとは話せるかもしれない。そこから死について、最期の迎え方について、もっと議論を広げる方法もあるかと思います。
(2023年2月2日)