ウィズ・コロナでなく

 コロナは依然として広がっています。消えはしない。
 けれどいまのコロナは2年前のコロナではない。変異株のオミクロン型です。マスクもワクチンも考え方もそれに合わせて変えなければいけない。「ウィズ・コロナ」といいつづけると、なんだかおなじ病気がずっとつづいているようですが、そうではない。「ウィズ・オミクロン」と考えた方がいいんじゃないかとも思います。

 オミクロンに対していまのワクチンが無効になったわけではないけれど、力が落ちています。このためアメリカではオミクロンに対応した新ワクチンができ、この秋から使われる見込みです。日本も遅れて、来年くらいまでにそうなるでしょう(Moderna says new trial results show that a revised vaccine works better against Omicron. June 8, 2022, The New York Times)。

 オミクロン株の対策としてモデルナ社が開発した新ワクチンは、現在のタイプにくらべて抗体価が1.75倍も高くなると同社が発表しました。つまり新ワクチンを打てば、オミクロン株に感染してもいままでの倍近い抗体の免疫力で病気に立ち向かえる。感染のおそれが減り、かりに感染しても重症化や長期化を防げます。

モデルナ社の現在のワクチン (iStock)

 注目されるのは、モデルナのこの新ワクチン、ブースターとして使われても高い効果を発揮することです。すでに旧型のワクチンを注射した人でも、3度目の追加接種に新型を使えばオミクロンに対処できる十分な免疫力が付く。だからブースターにはどんどん新型を使ったほうがいいことになります。
 逆にいうなら、いくら追加接種をしてもいまのワクチンだと効果はそれほど望めないし、すぐに4度目、5度目の追加接種が必要になるかもしれません。

 オミクロンは感染力が高いけれど、重症化しにくい。このためワクチンの接種が進んだ欧米では感染対策がしだいに撤廃されるようになりました。マスクを外し、ディスタンスも換気もこれまでのようにはしない。ふつうの風邪、インフルエンザなどに近い形の扱いになっています。ウィズ・コロナというより、ウィズ・オミクロンが進んでいるのでしょう。

 それに合わせて、再感染が増えました。3度目の感染例も報告されています。再感染はワクチンをしていようがブースターをしていようが、かかる人はかかる。でも死亡者はあきらかに減っているので緊張感は少ないようです。

 新型ワクチンの登場でオミクロン対策にはひとつのメドがつきました。問題はオミクロンもさらに変異するので、新型ワクチンの効力もいずれ低下することです。ウィズ・オミクロン、いつまでつづくのでしょうか。
(2022年6月15日)